海賊船、大工の部屋、タスクの部屋、リトルオイスターの部屋
海賊船、大工の部屋、タスクの部屋、リトルオイスターの部屋、
涙の湖にて、世界の裏側に迷い込んだように佇む巨大な海賊船。
かつて“時間を取引する海賊”たちが乗っていたと噂される。今やこの船は「不思議の国の闇金融屋」として冷徹な海賊タスクと、自由気ままなリトルオイスター、そしてそれを取り仕切る大工が運営する異界の取引場である。
エントランスホール
扉を開くと、濃厚な潮と金属の匂い。
広がるのは赤茶色の床板、濡れたように光る壁、そして天井を這う巨大な蔓のような船梁。
船内なのに、どこか森の中のような気配がある。壁には古びた絵画がいくつも並び、どれも“時”をテーマにしており、砂時計、懐中時計、溶けた時計、と。まるで「アリスの時間狂いの世界」とリンクするかのようにコーディネートされている。
入り口の正面には、この場所を示す看板が吊るされている。
「Shell & Skull Lending Co.」― 時間と金を、あなたの魂と引き換えに。
この言葉を読むと、壁の時計が一斉にズレた音を立てて回り出す。
廊下
船の中心を貫く長い廊下は、まるで生きた迷路。
床の木材は波のようにうねり、ランプの光が青く揺らめく。
左右の壁には、失われた海賊たちの肖像が埋め込まれ、
その瞳が通る者をじっと見つめている。
廊下の奥には分かれ道があり、
右がタスクの部屋と応接間、左がリトルオイスターの部屋への階段へ続く。
廊下の突き当たりには、金貨の模様が刻まれた分厚い扉がありそこが、取引のための応接間となっている。
“時間と債務”を取引する部屋ここが、タスクとリトルオイスターが“仕事”をする場所。
部屋は円形で、壁には波紋のように広がる木目模様が刻まれている。
天井の中央には、巨大なガラス球で中には小さな魚が泳ぎ、淡い光を放っている。
床は黒檀の木材で、金線が放射状に広がるような模様を描いている。
それはまるで取引の中心、契約の円環を象徴しているようにも見える。
壁一面には棚が並び、そこには「契約書」「利息表」「魂の保証書」などがガラス瓶に封じられている。
それぞれの瓶の中では、小さな光の粒が蠢いており、まるで**借金者の“時間”**そのものを閉じ込めているかのよう。
中央には、真っ黒な丸テーブル。
天板には羅針盤のような模様が彫られ、針は常に“北”ではなく“利益”を指す。
テーブルを挟むようにして上質なソファが二つ置かれている。
テーブルの上には小さな砂時計があり、取引が始まると自動的に砂が落ち始める。
砂が尽きる前に契約を結ばなければ、瓶の中の光が一つ消えてしまう。
しかし、すべての針が“異なる時刻”を指しており、この部屋では時間が平等ではない。
それがタスクとオイスターの商売の本質となっている。
タスクは冷たい声で数字を並べ、
リトルオイスターは軽く笑いながら契約を促す。
二人の間には奇妙な均衡があり、
「金」と「遊び心」の二面性が、この部屋を生かしている。
通称、“債務の心臓”
どれも名前が書かれており、中には光る砂が舞っている。
それは「時間債権」。
この船で借りた者は、自分の時間の一部を担保に差し出している。
返さなかった物は更に未来を差し出すしか無い。
船の最上階、操舵室のすぐ下にある。
ここは海賊船で最も静かで、最も危険な場所。
他の部屋が“幻想”に包まれているのに対し、
この部屋だけは“現実”のように鋭利で冷たい空気を放っている。
扉は厚い黒檀に鉄の金具。
取っ手には鯱の意匠が施され、目には赤い宝石が埋め込まれている。
開くと軋む音の代わりに低い機械音が鳴り、まるで心臓の鼓動のようなリズムが響く。
船全体の動力とつながっているらしく、
この部屋がまさに海賊船の“頭脳”であることを示している。
部屋は広く、外の湖を見下ろす巨大な窓が一面に広がる。
窓の外では常に霧が流れ、時折、魚影のような影が通り過ぎる。
床は黒い木材、艶を抑えた質感で、歩くと“すっ”と吸い込まれるような静けさ。
中央には、深い灰色の長机があり、その上には整然と並ぶ
契約書・地図・通信機・煙草の箱。
この部屋には、派手な装飾はないが、代わりに壁一面に掛けられた“時計の針”だけが目立つ。
それらは文字盤を持たず、針だけが無数に壁を刺している。
まるで時間がこの部屋の中で“止まる”ことを拒んでいるかのようにも見える。
棚には古い地図帳と金属製の羅針盤。
机の後ろの壁には、黒い鯱の頭骨が飾られている。
それがこの部屋の象徴“支配”の印のよう。
シーツは深藍色で、夜の海のように光を吸い込む。
その上には白いシャツが無造作に置かれ、煙草の香りが微かに残っている。
ベッドの脇には古い海賊旗。
タスクの部屋
大工の命令を最も忠実に形へ変える男、タスク。
その部屋は海賊船の心臓に近い場所、応接間の隣で「金と契約」の震源地にある。
船内の中では最も整然としており、まるで“秩序を保つための聖域”のような場所。
開けるとき内部から微かな金属音、時計の歯車がひとつ噛み合うような音が聞こえる。
扉の上には下記の記された小さなプレートが掲げられている。
「Task Office - Keep the Deal Running」(契約を止めるな)
壁は黒檀の木板で覆われ、艶やかに光を吸い込むみたい。
床は赤褐色の木材で出来ており、長年の使用でできた擦り傷やひびがあるが、
金属脚の家具がいくつも並び、その重みで床板が少し沈み込んでいる。
中心には錆びたシャンデリアが吊るされ、その灯りは黄昏のような暗さ。
部屋の中央には重厚な木製の机。その上には未開封の封筒、金貨、契約書の山。
銃よりも数字で人を支配する男だというのが表れている。
読むだけで頭が痛くなるような書物が並んでいる。
ヘッドボードには海の怪物の彫刻があり鯨か、あるいは鯱を模したもの。
その目に嵌められた小さな宝石が、灯りに反射して光る。
無機質なまでに整えられており、まるで「寝る」よりも「考える」ための場所にも見える。
タスクの部屋には音がない。あるのは、時計の針が刻む“取引のリズム”だけ。
タスクにとって“ずれ”は支配の証。相手が一秒遅れれば、彼が一歩先を取る。
彼の部屋はその冷たい支配の形が表れている。
リトルオイスターの部屋
そこは暗く湿った場所のはずなのに、彼の部屋だけは淡く光り、海の底のように穏やか。
そしてほんの少しの毒を内包している。
扉は白い貝殻を繋ぎ合わせて作られ、取っ手は真珠のように滑らか。
「Little Oyster’s Room - Do Not Disturb (Maybe?)」(邪魔しないで(かも?))
という、ゆるい手書きプレートがぶら下がっている。
潮と花の香りが混ざり、音の代わりに“光”が部屋を満たしている。
そこにクラゲや魚、泡の模様が描かれており、照明が当たると動くように見える。
壁際の棚には、拾い集めた宝物の小さなガラス瓶、錆びた羅針盤、貝殻、ビー玉、
そして“返済されなかった小さな担保品”が無造作に並ぶ。
その上には小さな水槽があり、中では金魚や奇妙な形の海の生き物が泳いでいる。
そこに寝転がって煙を吹き、半分夢の中のように過ごすが日課。
光る真珠のようなランプがヘッドボードを照らし、青白い光が泡のように天井に反射する。
寝ると、まるで波の中に沈むように包まれる。
開けると、リトルオイスターが集めた“秘密の宝”が入っている
それはお客がうっかり置き忘れた指輪や懐中時計、あるいは彼が“ちょっとだけ借りた”もの。
彼の空間には、時間も現実もゆるく溶けている。
それはタスクの管理帳簿とは違い、彼が個人的に「気に入った客」から預かったもの。
アリスの部屋
船の左舷・中層、タスクの部屋の向かい側。
外から見れば、普通のキャビンに見える。
しかし中に足を踏み入れると、そこは船内で唯一、息づける空間。
まるで海の底に沈んだ温室がそのまま浮かび上がったように、
木漏れ日と水のゆらめきが混じり合い、“現実と夢の境界”が曖昧に溶けた部屋。
扉は薄い水色の木で作られており、取っ手は花弁のような曲線を描いた真鍮製。
扉の中央には、鍵穴の代わりに小さな鏡がはめ込まれている。
覗くと、自分の顔ではなく“別の誰か”の姿が一瞬だけ映る。
扉の上には手彫りの文字で下記が書かれたプレートがある。
「“Room of the Stranger Who Stayed”」――(ここに留まる異邦人の部屋。)
壁は白を基調にしているが、そこかしこに蔦や花の模様が浮かび上がる。
しかし、よく見るとそれは海藻とサンゴの模様で、
まるで“陸と海の中間”のような不思議な空気を漂わせている。
壁の一部は鏡面になっており、光が反射して部屋全体に波のような揺らぎを生む。
床は白木の板張りだが、その間を淡い水のような光が流れている。
まるで足元に小川が通っているようで、歩くと柔らかく光が波打つ。
夜になるとこの光は強くなり、部屋全体が“水中”のように青白く染まる。
そこには金属で組まれた蔓のような装飾が絡み、外の湖の光がわずかに差し込む。
昼はやわらかな光が満ち、夜は湖面に映る星や月が透けて見える。
ベッドは白い木でできた四柱式。
天蓋は薄いガーゼのような布で、淡いラベンダー色をしている。
布には金糸で蝶や時計、ティーカップなどの模様が刺繍されている。
シーツは真珠のような光沢を持つ淡いクリーム色。
ベッドの周囲には、光る貝殻のランプがいくつも置かれ、
それぞれがゆっくりと“呼吸”しているように明滅する。
窓は丸く、潜水艦のハッチのよう。
そこから見えるのは湖の中で青い光の中を漂う藻、ゆっくりと泳ぐ魚、
窓辺には小さな机と椅子があり、欠けたティーカップ、金の鍵、名も知らぬ花の押し葉、
そして、誰かの落としたトランプのカードなどがおかれている。
クローゼットの中には、アリスがこの世界で与えられた衣服。
海賊風の衣装、錨のペンダント、貝殻のボタンがついたコートなど。
しかし奥の壁には小さな扉がある。
棚には不思議な本や小瓶が並ぶ。「飲めば眠る薬」「見れば笑う鏡」「聞けば忘れる貝殻」
どれもリトルオイスターが半ば冗談で置いていったもの。
部屋の灯りは、すべて“呼吸”するように揺れる。
シャンデリアではなく、光るクラゲのようなランプが天井を漂いながら柔らかく光を落とす。
その光が壁の鏡に反射し、床を波打たせ、ベッドを包む。